AはBのためにある事務処理を行った。これが、①A・B間における委任契約に基づく債務の履行である場合と、②Bのために行った事務管理である場合とに関する次のア~オの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
ア
Aは、①の場合において、事務の処理に関して費用を要するときは、Bに対しその費用の前払いを請求することができるのに対し、②の場合には、Bに対し事務の管理により生じる費用の前払いを請求することができない。
イ
Aは、①の場合には、事務を処理するために善良なる管理者の注意をもって必要と判断した費用についてBに対し償還請求をすることができるのに対し、②の場合には、Bのために有益であった費用についてのみBに対し償還請求をすることができる。
ウ
Aは、①の場合には、Bを代理する権限が法律上当然には認められないのに対し、②の場合には、Bを代理する権限が法律上当然に認められる。
エ
Aは、①の場合には、事務を処理するにあたって受け取った金銭をBに引き渡さなければならないが、②の場合には、Bに対しそのような義務を負わない。
オ
Aは、①の場合には、委任の終了後に遅滞なくBに事務処理の経過および結果を報告しなければならないのに対し、②の場合には、事務管理を終了しても、Bの請求がない限り、事務処理の結果を報告する義務を負わない。
1 ア・イ
2 ア・オ
3 イ・エ
4 ウ・エ
5 ウ・オ
解答
正解
1解説
ア 〇
Aは、①の場合において、事務の処理に関して費用を要するときは、Bに対しその費用の前払いを請求することができるのに対し、②の場合には、Bに対し事務の管理により生じる費用の前払いを請求することができない。
・委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない(民法 第六百四十九条)
イ 〇
Aは、①の場合には、事務を処理するために善良なる管理者の注意をもって必要と判断した費用についてBに対し償還請求をすることができるのに対し、②の場合には、Bのために有益であった費用についてのみBに対し償還請求をすることができる。
・民法 第六百四十四条、六百五十条、第七百二条
ウ ×
Aは、①の場合には、Bを代理する権限が法律上当然には認められないのに対し、
・ 事務管理者が本人の名でした法律行為の効果(最判昭和36年11月30日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和36年11月30日)
エ ×
Aは、①の場合には、事務を処理するにあたって受け取った金銭をBに引き渡さなければならないが、
・受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない。その収取した果実についても、同様とする(民法 第六百四十六条)
・第六百四十五条から第六百四十七条までの規定は、事務管理について準用する(第七百一条)
オ ×
Aは、①の場合には、委任の終了後に遅滞なくBに事務処理の経過および結果を報告しなければならないのに対し、②の場合には、事務管理を終了しても、
・受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない(民法 第六百四十五条)
■ 判例
・ 事務管理者が本人の名でした法律行為の効果(最判昭和36年11月30日)
「事務管理者が本人の名でした法律行為の効果は、当然には本人に及ぶものではない」
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和36年11月30日)
■ 民法
(受任者の注意義務)
第六百四十四条 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
(受任者による報告)
第六百四十五条 受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。
(受任者による受取物の引渡し等)
第六百四十六条 受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない。その収取した果実についても、同様とする。
2 受任者は、委任者のために自己の名で取得した権利を委任者に移転しなければならない。
(受任者による費用の前払請求)
第六百四十九条 委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない。
(受任者による費用等の償還請求等)
第六百五十条 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。
2 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。
3 受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。
(委任の規定の準用)
第七百一条 第六百四十五条から第六百四十七条までの規定は、事務管理について準用する。
(管理者による費用の償還請求等)
第七百二条 管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる。
2 第六百五十条第二項の規定は、管理者が本人のために有益な債務を負担した場合について準用する。
3 管理者が本人の意思に反して事務管理をしたときは、本人が現に利益を受けている限度においてのみ、前二項の規定を適用する。