土. 6月 6th, 2026

Aが自己所有の事務機器甲(以下、「甲」という。)をBに売却する旨の売買契約(以下、「本件売買契約」という。)が締結されたが、BはAに対して売買代金を支払わないうちに甲をCに転売してしまった。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1      
Aが甲をすでにBに引き渡しており、さらにBがこれをCに引き渡した場合であっても、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、甲につき先取特権を行使することができる。

2      
Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、CがAに対して所有権に基づいてその引渡しを求めたとき、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、同時履行の抗弁権を行使してこれを拒むことができる。

3      
本件売買契約において所有権留保特約が存在し、AがBから売買代金の支払いを受けていない場合であったとしても、それらのことは、Cが甲の所有権を承継取得することを何ら妨げるものではない。

4      
Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、CがAに対して所有権に基づいてその引渡しを求めたとき、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、留置権を行使してこれを拒むことができる。

5      
Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、Bが売買代金を支払わないことを理由にAが本件売買契約を解除(債務不履行解除)したとしても、Aは、Cからの所有権に基づく甲の引渡請求を拒むことはできない。

解答         

正解
解説
1 ×
Aが甲をすでにBに引き渡しており、さらにBがこれをCに引き渡した場合であっても、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、甲につき先取特権を行使することができる

・先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引渡した後は、その動産について行使することができない(民法 第三百三十三条)

2 ×
Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、CがAに対して所有権に基づいてその引き渡しを求めたときは、Aは、Bから売買代金の支払いにを受けていないときは、同時履行の抗弁権を行使してこれを拒むことができる

・民法 第五百三十三条

3 ×
本件売買契約において所有権留保特約が存在し、AがBから売買代金の支払いを受けていない場合であったとしても、それらのことは、Cが甲の所有権を承継取得することを何ら妨げるものではない

自動車売買契約に付した所有権留保特約に基づきその自動車の引渡を請求することが権利の濫用になるとされた事例 (最判昭和50年2月28日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和50年2月28日)

4 〇
Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、CがAに対して所有権に基づいてその引き渡しを求めた時、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、留置権を行使してこれを拒むことができる。

・民法 第二百九十五条

5 ×
Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、Bが売買代金を支払わないことを理由にAが本件売買契約を解除(債務不履行解除)したとしても、Aは、Cからの所有権に基づく甲の引渡請求を拒むことはできない

・民法 第五百四十五条


■ メモ

・同時履行の抗弁権を使えるのは当事者間であり、第三者は使えない
・留置権は、第三者にも主張できる


■ 判例

自動車売買契約に付した所有権留保特約に基づきその自動車の引渡を請求することが権利の濫用になるとされた事例 (最判昭和50年2月28日)

「自動車のサブデイーラーから自動車を買い受けたユーザーに対しデイーラーが右サブデイーラーとの間の自動車売買契約に付した所有権留保特約に基づきその自動車の引渡を請求することが権利の濫用になるとされた事例」

「自動車の販売につき、サブデイーラーが、まずデイーラー所有の自動車をユーザーに売却し、その後右売買を完成するためデイーラーからその自動車を買い受けるという方法がとられていた場合において、デイーラーが、サブデイーラーとユーザーとの自動車売買契約の履行に協力しておきながら、その後サブデイーラーにその自動車を売却するにあたつて所有権留保特約を付し、サブデイーラーの代金不払を理由に同人との売買契約を解除したうえ、留保された所有権に基づき、既にサブデイーラーに代金を完済して自動車の引渡を受けているユーザーにその返還を請求することは、権利の濫用として許されない」

「右引渡請求は、本来上告人においてサブデイーラーであるDに対してみずから負担すべき代金回収不能の危険をユーザーである被上告人に転嫁しようとするものであり、自己の利益のために代金を完済した被上告人に不測の損害を蒙らせるものであつて、権利の濫用として許されないものと解するを相当とする」

(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和50年2月28日)


■ 民法

(留置権の内容)
第二百九十五条 他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
2 前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。

(先取特権と第三取得者)
第三百三十三条 先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない。

(同時履行の抗弁)
第五百三十三条 双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。

(解除の効果)
第五百四十五条 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
2 前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
3 第一項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。
4 解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。

投稿者 Ren Yababa

邪抜刃 廉(やばば れん)a.k.a.フクイレン