Aは、配偶者がいるにもかかわらず、配偶者以外のBと不倫関係にあり、その関係を維持する目的で、A所有の甲建物をBに贈与した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、正しいものはどれか。
1
甲建物がAからBに引き渡されていない場合に、A・B間の贈与が書面によってなされたときには、Aは、Bからの引渡請求を拒むことはできない。
2
甲建物が未登記建物である場合において、Aが甲建物をBに引き渡したときには、Aは、Bに対して甲建物の返還を請求することはできない。
3
甲建物が未登記建物である場合において、Aが甲建物をBに引き渡した後に同建物についてA名義の保存登記をしたときには、Aは、Bに対して甲建物の返還を請求することができる。
4
A名義の登記がなされた甲建物がBに引き渡されたときには、Aは、Bからの甲建物についての移転登記請求を拒むことはできない。
5
贈与契約のいきさつにおいて、Aの不法性がBの不法性に比してきわめて微弱なものであっても、Aが未登記建物である甲建物をBに引き渡したときには、Aは、Bに対して甲建物の返還を請求することはできない。
解答
正解
2解説
1 ×
甲建物がAからBに引き渡されていない場合に、A・B間の贈与が書面によってなされたときには、Aは、Bからの引渡請求を
・公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効(民法 第九十条)
2 〇
甲建物が未登記建物である場合において、Aが甲建物をBに引き渡したときには、Aは、Bに対して甲建物の返還を請求することはできない。
・不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない(民法 第七百八条)
・登記のある建物は、「引き渡し」「登記の移転」が終わらないと、給付したことにならない
・ 不法の原因により未登記建物を贈与した場合 (最判昭和45年10月21日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和45年10月21日)
3 ×
甲建物が未登記建物である場合において、Aが甲建物をBに引き渡した後に同建物についてA名義の保存登記をしたときには、Aは、Bに対して甲建物の返還を
・未登記建物は、引き渡した時点で給付となる
・不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない(民法 第七百八条)
4 ×
A名義の登記がなされた甲建物がBに引き渡されたときには、Aは、Bからの甲建物についての移転登記請求を拒むことは
・登記のある建物は、「引き渡し」「登記の移転」を了しないと、給付をしたことにならない
5 ×
贈与契約のいきさつにおいて、Aの不法性がBの不法性に比してきわめて微弱なものであっても、Aが未登記建物である甲建物をBに引き渡したときには、Aは、Bに対して甲建物の返還を請求することはできない。
・ 消費貸借成立のいきさつに不法の点があつた場合における貸金返還請求と民法第90条および第708条の適用の有無 (最判昭和29年8月31日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和29年8月31日)
■ 判例
・ 不法の原因により未登記建物を贈与した場合 (最判昭和45年10月21日)
「一、不法の原因により未登記建物を贈与した場合、その引渡は、民法708条にいう給付にあたる。 二、建物の贈与に基づく引渡が不法原因給付にあたる場合に、贈与者は、目的物の所有権が自己にあることを理由として、右建物の返還を請求することはできない」
「同条は、みずから反社会的な行為をした者に対しては、その行為の結果の復旧を訴求することを許さない趣旨を規定したものと認められるから」
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和45年10月21日)
・ 消費貸借成立のいきさつに不法の点があつた場合における貸金返還請求と民法第90条および第708条の適用の有無 (最判昭和29年8月31日)
「消費貸借成立のいきさつにおいて、貸主の側に多少の不法があつたとしても、借主の側にも不法の点があり、前者の不法性が後者のそれに比しきわめて微弱なものに過ぎない場合には、民法第90条および第708条は適用がなく、貸主は貸金の返還を請求することができるものと解するのを相当とする。」
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和29年8月31日)
■ 民法
(公序良俗)
第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
(不法原因給付)
第七百八条 不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。