土. 6月 6th, 2026

物上代位に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはどれか。

1      
対抗要件を備えた抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され、譲受人が第三者に対する対抗要件を備えた後であっても、第三債務者がその譲受人に対して弁済する前であれば、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。

2      
対抗要件を備えた抵当権者が、物上代位権の行使として目的債権を差し押さえた場合、第三債務者が債務者に対して反対債権を有していたとしても、それが抵当権設定登記の後に取得したものであるときは、当該第三債務者は、その反対債権を自働債権とする目的債権との相殺をもって、抵当権者に対抗することはできない。

3      
動産売買の先取特権に基づく物上代位につき、動産の買主が第三取得者に対して有する転売代金債権が譲渡され、譲受人が第三者に対する対抗要件を備えた場合であっても、当該動産の元来の売主は、第三取得者がその譲受人に転売代金を弁済していない限り、当該転売代金債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。

4      
動産売買の先取特権に基づく物上代位につき、買主がその動産を用いて第三者のために請負工事を行った場合であっても、当該動産の請負代金全体に占める価格の割合や請負人(買主)の仕事内容に照らして、請負代金債権の全部または一部をもって転売代金債権と同視するに足りる特段の事情が認められるときは、動産の売主はその請負代金債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。

5      
抵当権者は、抵当不動産につき債務者が有する賃料債権に対して物上代位権を行使することができるが、同不動産が転貸された場合は、原則として、賃借人が転借人に対して取得した転賃貸料債権を物上代位の目的とすることはできない。

解答         

正解
解説
1 〇
対抗要件を備えた抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され、譲受人が第三者に対する対抗要件を備えた後であっても、第三債務者がその譲受人に対して弁済する前であれば、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。

抵当権者による物上代位権の行使と目的債権の譲渡(最判平成10年1月30日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最判平成10年1月30日) 

2 〇
対抗要件を備えた抵当権者が、物上代位権の行使として目的債権を差し押さえた場合、第三債務者が債務者に対して反対債権を有していたとしても、それが抵当権設定登記の後に取得したものであるときは、当該第三債務者は、その反対債権を自働債権とする目的債権との相殺をもって、抵当権者に対抗することはできない。

抵当不動産の賃借人が抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって賃料債権に物上代位権の行使としての差押えをした抵当権者に対抗することの可否(最判平成13年3月13日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最判平成13年3月13日)

3 ×
動産売買の先取特権に基づく物上代位につき、動産の買主が第三取得者に対して有する転売代金債権が譲渡され、譲受人が第三者に対する対抗要件を備えた場合であっても、当該動産の元来の売主は、第三取得者がその譲受人に転売代金を弁済していない限り、当該転売代金債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる

動産売買の先取特権者による物上代位権の行使と目的債権の譲渡(最判平成17年2月22日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最判平成17年2月22日)

4 〇
動産売買の先取特権に基づく物上代位につき、買主がその動産を用いて第三者のために請負工事を行った場合であっても、当該動産の請負代金全体に占める価格の割合や請負人(買主)の仕事内容に照らして、請負代金債権の全部または一部をもって転売代金債権と同視するに足りる特段の事情が認められるときは、動産の売主はその請負代金債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。

請負工事に用いられた動産の売主が請負代金債権に対して動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することの可否(最決平成10年12月18日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最決平成10年12月18日)

5 〇
抵当権者は、抵当不動産につき債務者が賃料債権に対して物上代位権を行使することができるが、同不動産が転貸された場合は、原則として、賃借人が転借人に対して取得した転賃貸料債権を物上代位の目的とすることはできない。

抵当不動産の賃借人が取得する転貸賃料債権について抵当権者が物上代位権を行使することの可否(最判平成12年4月14日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最判平成12年4月14日)


抵当権者による物上代位権の行使と目的債権の譲渡(最判平成10年1月30日)

「抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる」

「対抗要件を備えた債権譲渡が物上代位に優先するものと解するならば、抵当権設定者は、抵当権者からの差押えの前に債権譲渡をすることによって容易に物上代位権の行使を免れることができるが、このことは抵当権者の利益を不当に害するものというべきだからである」

(裁判所 裁判例結果詳細 最判平成10年1月30日) 


抵当不動産の賃借人が抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって賃料債権に物上代位権の行使としての差押えをした抵当権者に対抗することの可否(最判平成13年3月13日)

「抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は,抵当不動産の賃借人は,抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって,抵当権者に対抗することはできない」

「物上代位権の行使としての差押えのされる前においては,賃借人のする相殺は何ら制限されるものではないが,上記の差押えがされた後においては,抵当権の効力が物上代位の目的となった賃料債権にも及ぶところ,物上代位により抵当権の効力が賃料債権に及ぶことは抵当権設定登記により公示されているとみることができるから,抵当権設定登記の後に取得した賃貸人に対する債権と物上代位の目的となった賃料債権とを相殺することに対する賃借人の期待を物上代位権の行使により賃料債権に及んでいる抵当権の効力に優先させる理由はないというべきであるからである」

(裁判所 裁判例結果詳細 最判平成13年3月13日)


動産売買の先取特権者による物上代位権の行使と目的債権の譲渡(最判平成17年2月22日)

「動産売買の先取特権者は,物上代位の目的債権が譲渡され,第三者に対する対抗要件が備えられた後においては,目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することはできない」

「公示方法が存在しない動産売買の先取特権については,物上代位の目的債権の譲受人等の第三者の利益を保護する趣旨を含むものというべきである」

(裁判所 裁判例結果詳細 最判平成17年2月22日)



請負工事に用いられた動産の売主が請負代金債権に対して動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することの可否(最決平成10年12月18日)

「請負工事に用いられた動産の売主は、原則として、請負人が注文者に対して有する請負代金債権に対して動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することができないが、請負代金全体に占める当該動産の価額の割合や請負契約における請負人の債務の内容等に照らして請負代金債権の全部又は一部を右動産の転売による代金債権と同視するに足りる特段の事情がある場合には、右部分の請負代金債権に対して右物上代位権を行使することができる」

(裁判所 裁判例結果詳細 最決平成10年12月18日)


抵当不動産の賃借人が取得する転貸賃料債権について抵当権者が物上代位権を行使することの可否(最判平成12年4月14日)

「抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、右賃借人が取得する転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない」

「所有者は被担保債権の履行について抵当不動産をもって物的責任を負担するものであるのに対し、抵当不動産の賃借人は、このような責任を負担するものではなく、自己に属する債権を被担保債権の弁済に供されるべき立場にはないからである」

(裁判所 裁判例結果詳細 最判平成12年4月14日)


■ 民法

(物上代位)
第三百四条 先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
2 債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。

投稿者 Ren Yababa

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