木. 6月 4th, 2026

行政庁の裁量に関する次のア~エの記述に関して、最高裁判所の判例に照らし、その正誤を正しく示す組合せはどれか。

ア      
地方公共団体が指名競争入札に参加させようとする者を指名するにあたり、地元の経済の活性化にも寄与することを考慮して地元企業を優先的に指名することは、合理的な裁量権の行使として許容される。

イ      
地方公共団体が第三セクター法人の事業に関して当該法人の債権者と損失補償契約を結んだ場合、当該契約の適法性、有効性は、契約締結に係る公益上の必要性についての長の判断に裁量権の逸脱、濫用があったか否かによって判断される。

ウ      
道路運送法に基づく一般乗用旅客自動車運送事業(いわゆるタクシー事業)の許可について、その許可基準が抽象的、概括的なものであるとしても、判断に際して行政庁の専門技術的な知識経験や公益上の判断を必要としないことから、行政庁に裁量は認められない。

エ      
水道法15条1項 * にいう「正当の理由」の判断に関して、水道事業者たる地方公共団体の長が近い将来における水不足が確実に予見されることを理由として給水契約の締結を拒絶することは、裁量権の逸脱、濫用として違法となる。

(注)* 水道法15条1項
水道事業者は、事業計画に定める給水区域内の需要者から給水契約の申込みを受けたときは、正当の理由がなければ、これを拒んではならない。

  ア イ ウ エ 
1 正 誤 正 誤 

2 誤 正 正 誤 

3 正 誤 正 正 

4 正 正 誤 誤 

5 誤 誤 誤 正 

解答         

正解
解説
ア 〇 地方公共団体が指名競争入札に参加させようとする者を指名するにあたり、地元の経済の活性化にも寄与することを考慮して地元企業を優先的に指名することは、合理的な裁量権の行使として許容される。

指名競争入札における村外業者(最判平成18年10月26日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最判平成18年10月26日)

イ 〇
地方公共団体が第三セクター法人の事業に関して当該法人の債権者と損失補償契約を結んだ場合、当該契約の適法性、有効性は、契約締結に係る公益上の必要性についての長の判断に裁量権の逸脱、乱用があったか否かによって判断される。

損失補償契約に基づく金融機関等への公金の支出の差止めを求める訴え(最判平成23年10月27日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最判平成23年10月27日)

ウ ×
道路運送法に基づく一般乗用旅客自動車運送事業(いわゆるタクシー事業)の許可について、その許可基準が抽象的、概括的なものであるとしても、判断に際して行政庁の専門技術的な知識経験や公益上の判断を必要としないことから、行政庁に裁量は認められない

三菱タクシー運賃変更申請却下事件(最判平成11年7月19日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最判平成11年7月19日)

エ ×
水道法15条1項 * にいう「正当の理由」の判断に関して、水道事業者たる地方公共団体の長が近い将来における水不足が確実に予見されることを理由として給水契約の締結を拒絶することは、裁量権の逸脱、濫用として違法となる

志免町給水拒否事件(最判平成11年1月21日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最判平成11年1月21日)


指名競争入札における村外業者(最判平成18年10月26日)

「村の発注する公共工事の指名競争入札に長年指名を受けて継続的に参加していた建設業者を特定年度以降全く指名せず入札に参加させなかった村の措置につき上記業者が村外業者に当たることを理由に違法とはいえないとした原審の判断に違法があるとされた事例」

「村の発注する公共工事の指名競争入札に昭和60年ころから平成10年度まで指名を受けて継続的に参加し工事を受注してきていた建設業者に対し,村が,村外業者に当たること等を理由に,同12年度以降全く指名せず入札に参加させない措置を採った場合において,(1)村内業者で対応できる工事の指名競争入札では村内業者のみを指名するという実際の運用基準は村の要綱等に明定されておらず,村内業者であるか否かの客観的で具体的な判定基準も明らかにされていなかったこと,(2)上記業者は,平成6年に代表者らが同村から県内の他の町へ転居した後も,登記簿上の本店所在地を同村内とし,同所に代表者の母である監査役が居住し,上記業者の看板を掲げるなどしており,平成10年度までは指名を受け,受注した工事において施工上の支障を生じさせたこともうかがわれないことなど判示の事情の下では,指名についての上記運用及び上記業者が村外業者に当たるという判断が合理的であるとし,そのことのみを理由として,村の上記措置が違法であるとはいえないとした原審の判断には違法がある」

「地方公共団体が,指名競争入札に参加させようとする者を指名するに当たり,① 工事現場等への距離が近く現場に関する知識等を有していることから契約の確実な履行が期待できることや,② 地元の経済の活性化にも寄与することなどを考慮し,地元企業を優先する指名を行うことについては,その合理性を肯定することができる」

(裁判所 裁判例結果詳細 最判平成18年10月26日)


損失補償契約に基づく金融機関等への公金の支出の差止めを求める訴え(最判平成23年10月27日)

「市の住民が市長に対し損失補償契約に基づく金融機関等への公金の支出の差止めを求める訴えが不適法とされた事例」

「市が法人の債権者である金融機関等との間で損失補償契約を締結した場合において,市の住民が市長に対し上記契約に基づく上記金融機関等への公金の支出の差止めを求める訴えは,当該法人が清算手続に移行しており,市が損失補償を約した当該法人の債務が全額弁済されたという事実関係の下においては,不適法である」

「記録によれば,上記株式会社は原判決言渡し後に清算手続に移行しており,当該手続において,同社の債務のうち市が本件各契約によって損失の補償を約していた部分については,既に上記金融機関等に全額弁済されたことが認められるから,市が将来において本件各契約に基づき上記金融機関等に対し公金を支出することとなる蓋然性は存しない」

「上記損失補償契約の適法性及び有効性は,地方自治法232条の2の規定の趣旨等に鑑み,当該契約の締結に係る公益上の必要性に関する当該地方公共団体の執行機関の判断にその裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があったか否かによって決せられるべきものと解するのが相当である」

(裁判所 裁判例結果詳細 最判平成23年10月27日)


三菱タクシー運賃変更申請却下事件(最判平成11年7月19日)

「一般乗用旅客自動車運送事業者の道路運送法9条1項に基づく運賃変更の認可申請を却下した地方運輸局長の処分にその裁量権を逸脱し又はこれを濫用した違法はないとされた事例」

「平成元年4月1日の消費税法の適用の際に消費税を転嫁するための運賃変更の認可申請をせず、その後も同業他社と同様の運賃変更の認可申請をしなかったため、同業他社の運賃との間に14.2パーセントの格差が生じていた一般乗用旅客自動車運送事業者が、平成3年3月29日、道路運送法9条1項に基づき、消費税転嫁分として3パーセントの値上げを内容とする運賃変更の認可申請をしたところ、地方運輸局長が、右事業者の提出した原価計算書その他の書類に基づき、右申請に係る運賃の変更が同条2項1号の基準に適合するか否かを昭和48年7月26日付け自旅第273号自動車局長依命通達別紙(2)の「一般乗用旅客自動車運送事業の運賃原価算定基準」に準拠して個別に審査しようとして、右事業者に対して右原価計算書に記載された原価計算の算定根拠等について説明を求めたにもかかわらず、右事業者が運賃変更の理由は消費税の転嫁である旨の陳述をしたのみで右算定根拠等を明らかにしなかったため、地方運輸局長において右事業者の提出した書類によっては右事業者の採用した原価計算の合理性について審査判断することができなかったなど判示の事実関係の下においては、地方運輸局長がした右申請を却下する旨の処分には、その裁量権を逸脱し、又はこれを濫用した違法はない」

「同号の基準は抽象的、概括的なものであり、右基準に適合するか否かは、行政庁の専門技術的な知識経験と公益上の判断を必要とし、ある程度の裁量的要素があることを否定することはできない」

(裁判所 裁判例結果詳細 最判平成11年7月19日)


志免町給水拒否事件(最判平成11年1月21日)

「水道事業者である町が水道水の需要の増加を抑制するためマンション分譲業者との給水契約の締結を拒否したことに水道法15条1項にいう「正当の理由」があるとされた事例」

「水道事業を経営する町がマンション分譲業者からの420戸分の給水契約の申込みに対し契約の締結を拒んだことは、当該町が、全国有数の人口過密都市であり今後も人口の集積が見込まれ、認可を受けた水源のみでは現在必要とされる給水量を賄うことができず、認可外の水源から取水して給水量を補っているが当該取水は不安定であり、多額の財政的負担をして種々の施策を執ってきているが容易に右状況が改善されることは見込めず、このまま漫然と新規の給水申込みに応じていると近い将来需要に応じきれなくなり深刻な水不足を生ずるこが予測されるという判示の事実関係の下においては、新たな給水申込みのうち、需要量が特に大きく、住宅を供給する事業を営む者が住宅を分譲する目的であらかじめしたものについて給水契約の締結を拒むことにより、急激な水道水の需要の増加を抑制するためのやむを得ない措置であって、右の措置には水道法15条1項にいう「正当の理由」があるものというべきである」

「給水契約の申込みが右のような適正かつ合理的な供給計画によっては対応することができないものである場合には、法15条1項にいう「正当の理由」があるものとして、これを拒むことが許されると解すべきである」

(裁判所 裁判例結果詳細 最判平成11年1月21日)


■ 道路運送法

(許可基準)
第六条 国土交通大臣は、一般旅客自動車運送事業の許可をしようとするときは、次の基準に適合するかどうかを審査して、これをしなければならない。
一 当該事業の計画が輸送の安全を確保するため適切なものであること。
二 前号に掲げるもののほか、当該事業の遂行上適切な計画を有するものであること。
三 当該事業を自ら適確に遂行するに足る能力を有するものであること。


■ 水道法

(給水義務)
第十五条 水道事業者は、事業計画に定める給水区域内の需要者から給水契約の申込みを受けたときは、正当の理由がなければ、これを拒んではならない。
2 水道事業者は、当該水道により給水を受ける者に対し、常時水を供給しなければならない。ただし、第四十条第一項の規定による水の供給命令を受けた場合又は災害その他正当な理由があつてやむを得ない場合には、給水区域の全部又は一部につきその間給水を停止することができる。この場合には、やむを得ない事情がある場合を除き、給水を停止しようとする区域及び期間をあらかじめ関係者に周知させる措置をとらなければならない。
3 水道事業者は、当該水道により給水を受ける者が料金を支払わないとき、正当な理由なしに給水装置の検査を拒んだとき、その他正当な理由があるときは、前項本文の規定にかかわらず、その理由が継続する間、供給規程の定めるところにより、その者に対する給水を停止することができる。


■ 地方自治法

(寄附又は補助)
第二百三十二条の二 普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。

投稿者 Ren Yababa

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