土. 6月 6th, 2026

取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者に対する弁済等に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはいくつあるか。

※ 法改正により、「債権の占有者」は、「受領権者としての外観を有する者」とした。

ア      
他人名義の預金通帳と届出印を盗んだ者が銀行の窓口でその代理人と称して銀行から払戻しを受けた場合に、銀行が、そのことにつき善意であり、かつ過失がなければ、当該払戻しは、取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者への弁済として有効な弁済となる。

イ      
他人名義の定期預金通帳と届出印を盗んだ者が銀行の窓口で本人と称して、定期預金契約時になされた定期預金の期限前払戻特約に基づいて払戻しを受けた場合に、銀行がそのことにつき善意であり、かつ過失がなければ、当該払戻しは、取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者への弁済として有効な弁済となる。

ウ      
他人名義の定期預金通帳と届出印を盗んだ者が銀行の窓口で本人と称して銀行から定期預金を担保に融資を受けたが、弁済がなされなかったため、銀行が当該貸金債権と定期預金債権とを相殺した場合に、銀行が、上記の事実につき善意であり、かつ過失がなければ、当該相殺は、取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者への弁済の規定の類推適用により有効な相殺となる。

エ      
債権者の被用者が債権者に無断でその印鑑を利用して受取証書を偽造して弁済を受けた場合であっても、他の事情と総合して当該被用者が取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者と認められるときには、債務者が、上記の事実につき善意であり、かつ過失がなければ、当該弁済は、取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者への弁済として有効な弁済となる。

オ      
債権が二重に譲渡され、一方の譲受人が第三者対抗要件を先に具備した場合に、債務者が、その譲受人に対する弁済の有効性について疑いを抱いてもやむをえない事情があるなど、対抗要件で劣後する譲受人を真の債権者であると信ずるにつき相当の理由があるときに、その劣後する譲受人に弁済すれば、当該弁済は、取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者への弁済として有効な弁済となる。

1 一つ   
2 二つ   
3 三つ   
4 四つ   
5 五つ   

解答         

正解
解説


ア 〇
他人名義の預金通帳と届出印を盗んだ者が銀行の窓口でその代理人と称して銀行から払戻しを受けた場合に、銀行が、そのことにつき善意であり、かつ過失がなければ、当該払戻しは、取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者への弁済として有効な弁済となる。

債権者の代理人と称して債権を行使する者に対する民法第478条の適用の有無(最判昭和37年8月21日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和37年8月21日)

イ 〇
他人名義の定期預金通帳と届出印を盗んだ者が銀行の窓口で本人と称して、定期預金契約時になされた定期預金の期限前払戻特約に基づいて払戻しを受けた場合に、銀行がそのことにつき善意であり、かつ過失がなければ、当該払戻しは、取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者への弁済として有効な弁済となる。

定期預金の期限前払戻に民法第478条の適用があるとされた事例(最判昭和41年10月4日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和41年10月4日)

ウ 〇
他人名義の定期預金通帳と届出印を盗んだ者が銀行の窓口で本人と称して銀行から定期預金を担保に融資を受けたが、弁済がなされなかったため、銀行が当該貸金債権と定期預金債権とを相殺した場合に、銀行が、上記の事実につき善意であり、かつ過失がなければ、当該相殺は、取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者への弁済の規定の類推適用により有効な相殺となる。

銀行が無記名定期預金の預金者と認定した者に対して貸付をした場合における貸付債権をもつてする相殺と民法478条の類推適用(最判昭和48年3月27日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和48年3月27日)

エ 〇
債権者の被用者が債権者に無断でその印鑑を利用して受取証書を偽造して弁済を受けた場合であっても、他の事情と総合して当該被用者が取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者と認められるときには、債務者が、上記の事実につき善意であり、かつ過失がなければ、当該弁済は、取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者への弁済として有効な弁済となる。

偽造の受取証書の持参人(大判昭和2年6月22日)
(裁判所 裁判例結果詳細 なし)

オ 〇
債権が二重に譲渡され、一方の譲受人が第三者対抗要件を先に具備した場合に、債務者が、その譲受人に対する弁済の有効性について疑いを抱いてもやむをえない事情があるなど、対抗要件で劣後する譲受人を真の債権者であると信ずるにつき相当の理由があるときに、その劣後する譲受人に弁済すれば、当該弁済は、取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者への弁済として有効な弁済となる。

指名債権が二重に譲渡された場合に対抗要件を後れて具備した譲受人に対してされた弁済と民法478条の適用(最判昭和61年4月11日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和61年4月11日)


債権者の代理人と称して債権を行使する者に対する民法第478条の適用の有無(最判昭和37年8月21日)

「債権者の代理人と称して債権を行使する者についても民法第478条が適用される」

(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和37年8月21日)


定期預金の期限前払戻に民法第478条の適用があるとされた事例(最判昭和41年10月4日)

「定期預金契約の締結に際し、当該預金の期限前払戻の場合における弁済の具体的内容が契約当事者の合意により確定されているときは、右預金の期限前の払戻であつても、民法第478条の適用をうける」

(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和41年10月4日)


銀行が無記名定期預金の預金者と認定した者に対して貸付をした場合における貸付債権をもつてする相殺と民法478条の類推適用(最判昭和48年3月27日)

「銀行が、無記名定期預金につき真実の預金者と異なる者を預金者と認定し、この者に対し、右預金と相殺する予定のもとに貸付をし、その後右の相殺をするときには、民法478条の類推適用がある」

「銀行は、銀行が預金者と定めた者(以下、表見預金者という。)が真実の預金者と異なるとしても、銀行として尽くすべき相当な注意を用いた以上、民法478条の類推適用、あるいは、無記名定期預金契約上存する免責規定によつて、表見預金者に対する賃金債権と無記名定期預金債務との相殺等をもつて真実の預金者に対抗しうるものと解するのが相当であり、かく解することによつて、真実の預金者と銀行との利害の調整がはかられうるからである」

(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和48年3月27日)


指名債権が二重に譲渡された場合に対抗要件を後れて具備した譲受人に対してされた弁済と民法478条の適用(最判昭和61年4月11日)

「指名債権が二重に譲渡された場合に、民法467条2項所定の対抗要件を後れて具備した譲受人に対してされた弁済についても、同法478条の適用がある」

「債務者が、右弁済をするについて、劣後譲受人の債権者としての外観を信頼し、右譲受人を真の債権者と信じ、かつ、そのように信ずるにつき過失のないときは、債務者の右信頼を保護し、取引の安全を図る必要があるので、民法478条の規定により、右譲受人に対する弁済はその効力を有するものと解すべきであるからである」

(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和61年4月11日)


■ 民法

(受領権者としての外観を有する者に対する弁済)
第四百七十八条 受領権者(債権者及び法令の規定又は当事者の意思表示によって弁済を受領する権限を付与された第三者をいう。以下同じ。)以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。

投稿者 Ren Yababa

邪抜刃 廉(やばば れん)a.k.a.フクイレン