生命侵害等に対する近親者の損害賠償請求権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
1
他人の不法行為により夫が即死した場合には、その妻は、相続によって夫の逸失利益について損害賠償請求権を行使することはできない。
2
他人の不法行為により夫が死亡した場合には、その妻は、相続によって夫本人の慰謝料請求権を行使できるので、妻には固有の慰謝料請求権は認められていない。
3
他人の不法行為により、夫が慰謝料請求権を行使する意思を表明しないまま死亡した場合には、その妻は、相続によって夫の慰謝料請求権を行使することはできない。
4
他人の不法行為により死亡した被害者の父母、配偶者、子以外の者であっても、被害者との間にそれらの親族と実質的に同視し得る身分関係が存在するため被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた場合には、その者は、加害者に対して直接固有の慰謝料請求をすることができる。
5
他人の不法行為により子が重い傷害を受けたために、当該子が死亡したときにも比肩しうべき精神上の苦痛をその両親が受けた場合でも、被害者本人は生存しており本人に慰謝料請求権が認められるので、両親には固有の慰謝料請求権は認められていない。
解答
正解
4解説
1 ×
他人の不法行為により夫が即死した場合には、その妻は、相続によって夫の逸失利益について損害賠償請求権を行使することは
・ 即死の場合の損害賠償請求権の相続性 (大判大正15年2月16日)
(裁判所 裁判例結果詳細 なし)
2 ×
他人の不法行為により夫が死亡した場合には、その妻は、相続によって夫本人の慰謝料請求権を行使できるので、妻には固有の慰謝料請求権は認められて
・ 夫が死亡した場合の妻固有の慰謝料請求権 (大判大正15年2月16日)
(裁判所 裁判例結果詳細 なし)
3 ×
他人の不法行為により、夫が慰謝料請求権を行使する意思を表明しないまま死亡した場合には、その妻は、相続によって夫の慰謝料請求権を行使することは
・ 不法行為による慰藉料請求権は相続の対象となる(最大判昭和42年11月1日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最大判昭和42年11月1日)
4 〇 他人の不法行為により死亡した被害者の父母、配偶者、子以外の者であっても、被害者との間にそれらの親族と実質的に同視し得る身分関係が存在するため被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた場合には、その者は、加害者に対して直接固有の慰謝料請求をすることができる。
・ 民法711条の類推適用により被害者の夫の妹に慰藉料請求権が認められた事例(最判昭和49年12月17日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和49年12月17日)
5 ×
他人の不法行為により子が重い傷害を受けたために、当該子が死亡したときにも比肩しうべき精神上の苦痛をその両親が受けた場合でも、被害者本人は生存しており本人に慰謝料請求権が認められるので、両親には固有の慰謝料請求権は認められて
・ 不法行為により身体を害された被害者の母の慰藉料請求が認容された事例(最判昭和33年8月5日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和33年8月5日)
・ 不法行為による慰藉料請求権は相続の対象となるか(最大判昭和42年11月1日)
「不法行為による慰藉料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明しなくても、相続の対象となる」
「慰藉料請求権そのものは、財産上の損害賠償請求権と同様、単純な金銭債権であり、相続の対象となりえないものと解すべき法的根拠はなく」
(裁判所 裁判例結果詳細 最大判昭和42年11月1日)
・ 民法711条の類推適用により被害者の夫の妹に慰藉料請求権が認められた事例(最判昭和49年12月17日)
「不法行為により死亡した被害者の夫の妹であつても、この者が、跛行顕著な身体障害者であるため、長年にわたり被害者と同居してその庇護のもとに生活を維持し、将来もその継続を期待しており、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた等判示の事実関係があるときには、民法711条の類推適用により加害者に対し慰藉料を請求しうる」
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和49年12月17日)
・ 不法行為により身体を害された被害者の母の慰藉料請求が認容された事例(最判昭和33年8月5日)
「不法行為により身体を害された者の母は、そのために被害者が生命を害されたときにも比肩すべき精神上の苦痛を受けた場合、自己の権利として慰藉料を請求しうるものと解するのが相当である」
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和33年8月5日)