土. 6月 6th, 2026

次の文章は、処分の理由の提示のあり方が問題となった事案に関する、最高裁判所判決の一部である。空欄〔 ア 〕~〔 エ 〕に入る語句の組合せとして、正しいものはどれか。

 行政手続法14条1項本文が、〔 ア 〕をする場合に同時にその理由を〔 イ 〕に示さなければならないとしているのは、〔 イ 〕に直接に義務を課し又はその権利を制限するという〔 ア 〕の性質に鑑み、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を〔 イ 〕に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解される。そして、同項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは、上記のような同項本文の趣旨に照らし、当該処分の根拠法令の規定内容、当該処分に係る〔 ウ 〕の存否及び内容並びに公表の有無、当該処分の性質及び内容、当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきである。(中略)
 建築士に対する上記懲戒処分については、処分内容の決定に関し、本件〔 ウ 〕が定められているところ、本件〔 ウ 〕は、〔 エ 〕の手続を経るなど適正を担保すべき手厚い手続を経た上で定められて公にされており、しかも、その内容は・・・多様な事例に対応すべくかなり複雑なものとなっている。そうすると、建築士に対する上記懲戒処分に際して同時に示されるべき理由としては、処分の原因となる事実及び処分の根拠法条に加えて、本件〔 ウ 〕の適用関係が示されなければ、処分の〔 イ 〕において上記事実及び根拠法条の提示によって処分要件の該当性に係る理由は知り得るとしても、いかなる理由に基づいてどのような〔 ウ 〕の適用によって当該処分が選択されたのかを知ることは困難であるのが通例であると考えられる。(最三小判平成23年6月7日民集65巻4号2081頁)

     ア       イ     ウ   エ 
1 申請に対する処分 利害関係人 審査基準 聴聞   

2 不利益処分    名宛人   審査基準 聴聞   

3 申請に対する処分 利害関係人 処分基準 意見公募 

4 不利益処分    利害関係人 処分基準 聴聞   

5 不利益処分    名宛人   処分基準 意見公募 

解答         

正解
解説 〔 ア 〕不利益処分
〔 イ 〕名宛人
〔 ウ 〕処分基準
〔 エ 〕意見公募

 行政手続法14条1項本文が、〔 不利益処分 〕をする場合に同時にその理由を〔 名宛人 〕に示さなければならないとしているのは、〔 名宛人 〕に直接に義務を課し又はその権利を制限するという〔 不利益処分 〕の性質に鑑み、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を〔 名宛人 〕に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解される。そして、同項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは、上記のような同項本文の趣旨に照らし、当該処分の根拠法令の規定内容、当該処分に係る〔 処分基準 〕の存否及び内容並びに公表の有無、当該処分の性質及び内容、当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきである。(中略)
 建築士に対する上記懲戒処分については、処分内容の決定に関し、本件〔 処分基準 〕が定められているところ、本件〔 処分基準 〕は、〔 意見公募 〕の手続を経るなど適正を担保すべき手厚い手続を経た上で定められて公にされており、しかも、その内容は・・・多様な事例に対応すべくかなり複雑なものとなっている。そうすると、建築士に対する上記懲戒処分に際して同時に示されるべき理由としては、処分の原因となる事実及び処分の根拠法条に加えて、本件〔 処分基準 〕の適用関係が示されなければ、処分の〔 名宛人 〕において上記事実及び根拠法条の提示によって処分要件の該当性に係る理由は知り得るとしても、いかなる理由に基づいてどのような〔 処分基準 〕の適用によって当該処分が選択されたのかを知ることは困難であるのが通例であると考えられる。


■ 行政手続法

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 四 不利益処分 行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。ただし、次のいずれかに該当するものを除く。
 八 命令等 内閣又は行政機関が定める次に掲げるものをいう
  ハ 処分基準(不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準をいう。以下同じ。)

(不利益処分の理由の提示)
第十四条 行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。
2 行政庁は、前項ただし書の場合においては、当該名あて人の所在が判明しなくなったときその他処分後において理由を示すことが困難な事情があるときを除き、処分後相当の期間内に、同項の理由を示さなければならない。
3 不利益処分を書面でするときは、前二項の理由は、書面により示さなければならない。


一級建築士免許取消処分等取消請求事件 (最判平成23年6月7日)

「公にされている処分基準の適用関係を示さずにされた建築士法(平成18年法律第92号による改正前のもの)10条1項2号及び3号に基づく一級建築士免許取消処分が,行政手続法14条1項本文の定める理由提示の要件を欠き,違法であるとされた事例」

「建築士法(平成18年法律第92号による改正前のもの)10条1項2号及び3号に基づいてされた一級建築士免許取消処分の通知書において,処分の理由として,名宛人が,複数の建築物の設計者として,建築基準法令に定める構造基準に適合しない設計を行い,それにより耐震性等の不足する構造上危険な建築物を現出させ,又は構造計算書に偽装が見られる不適切な設計を行ったという処分の原因となる事実と,同項2号及び3号という処分の根拠法条とが示されているのみで,同項所定の複数の懲戒処分の中から処分内容を選択するための基準として多様な事例に対応すべくかなり複雑な内容を定めて公にされていた当時の建設省住宅局長通知による処分基準の適用関係が全く示されていないなど判示の事情の下では,名宛人において,いかなる理由に基づいてどのような処分基準の適用によって当該処分が選択されたのかを知ることができず,上記取消処分は,行政手続法14条1項本文の定める理由提示の要件を欠き,違法である」

(裁判所 裁判例結果詳細 最判平成23年6月7日)

投稿者 Ren Yababa

邪抜刃 廉(やばば れん)a.k.a.フクイレン