A市においては、地域の生活環境の整備を図るために、繁華街での路上喫煙を禁止し、違反者には最高20万円の罰金もしくは最高5万円の過料のいずれかを科することを定めた条例を制定した。この場合における次の記述のうち、正しいものはどれか。
1
違反者に科される過料は、行政上の義務履行確保のための執行罰に当たるものであり、義務が履行されるまで複数回科すことができる。
2
本条例に基づく罰金は、行政刑罰に当たるものであり、非訟事件手続法の定めに基づき裁判所がこれを科する。
3
条例の効力は属人的なものであるので、A市の住民以外の者については、たとえA市域内の繁華街で路上喫煙に及んだとしても、本条例に基づき処罰することはできない。
4
条例に懲役刑を科する旨の規定を置くことは許されていないことから、仮に本条例が違反者に対して懲役を科するものであれば、違法無効になる。
5
長の定める規則に罰金を科する旨の規定を置くことは認められていないことから、本条例にかえて長の規則で違反者に罰金を科することは許されない。
解答
正解
5解説
1 ×
違反者に科される過料は、行政上の義務履行確保のための
・路上喫煙に対する5万円の過料は、秩序罰
・秩序罰は、繰り返し同じ罰を与えることができない
・行政代執行法 第一条
2 ×
本条例に基づく罰金は、行政刑罰に当たるものであり、
・行政刑罰は、刑事訴訟法の定めに基づく
3 ×
条例の効力は属人的なものであるので、A市の住民以外の者については、たとえA市域内の繁華街で路上喫煙に及んだとしても、本条例に基づき
・ 昭和24年新潟県条例第4号 (公安条例)の属地的効力 (最大判昭和29年11月24日) (裁判所 裁判例結果詳細 最大判昭和29年11月24日)
4 ×
条例に懲役刑を科する旨の規定を置くことは
・地方自治法 第十四条3項
5 〇
長の定める規則に罰金を科する旨の規定を置くことは認められていないことから、本条例にかえて長の規則で違反者に罰金を科することは許されない。
・地方自治法 第十五条2項
■ まとめ
・秩序罰は、繰り返し同じ罰を与えることができない
・執行罰は、繰り返し同じ罰を与えることができる
・条例で、執行罰を定めることはできない
・執行罰を定められるのは、法律のみ
・条例は、属地主義
・2年以下の懲役刑なら、条例で定めることができる
・長が決められるのは、5万円以下の過料
・行政刑罰も刑罰なので、刑事訴訟法があてはまる
・ 昭和24年新潟県条例第4号 (公安条例)の属地的効力 (最大判昭和29年11月24日)
「昭和24年新潟県条例第4号(公安条例)は、新潟県の地域内においては、この地域に来れる何人に対してもその効力を及ぼすものであつて、他県の在住者といえども、同県内において右条例の罰則にあたる行為をした以上、その罪責を免れるものではない」
「条例を制定する権能もその効力も、法律の認める範囲を越えることを得ないとともに、法律の範囲内に在るかぎり原則としてその効力は当然属地的に生ずるものと解すべきである。それゆえ本件条例は、新潟県の地域内においては、この地域に来れる何人に対してもその効力を及ぼすものといわなければならない」
(裁判所 裁判例結果詳細 最大判昭和29年11月24日)
■ 行政代執行法
第一条 行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、この法律の定めるところによる。
■ 地方自治法
第十四条 普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第二条第二項の事務に関し、条例を制定することができる。
2 普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない。
3 普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、二年以下の拘禁刑、百万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。
第十五条 普通地方公共団体の長は、法令に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則を制定することができる。
2 普通地方公共団体の長は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、普通地方公共団体の規則中に、規則に違反した者に対し、五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる