行政手続に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、誤っているものはどれか。
1
行政手続は刑事手続とその性質においておのずから差異があることから、常に必ず行政処分の相手方等に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるなどの一定の手続を設けることを必要とするものではない。
2
公害健康被害補償法*に基づく水俣病患者認定申請を受けた処分庁は、早期の処分を期待していた申請者が手続の遅延による不安感や焦燥感によって内心の静穏な感情を害されるとしても、このような結果を回避すべき条理上の作為義務を負うものではない。
(注)* 公害健康被害の補償に関する法律
3
一般旅客自動車運送事業の免許拒否処分につき、公聴会審理において申請者に主張立証の機会が十分に与えられなかったとしても、運輸審議会(当時)の認定判断を左右するに足る資料等が追加提出される可能性がなかった場合には、当該拒否処分の取消事由とはならない。
4
国税犯則取締法上、収税官吏が犯則嫌疑者に対し質問する際に拒否権の告知は義務付けられていないが、供述拒否権を保障する憲法の規定はその告知を義務付けるものではないから、国税犯則取締法上の質問手続は憲法に違反しない。
5
教育委員会の秘密会で為された免職処分議決について、免職処分の審議を秘密会で行う旨の議決に公開原則違反の瑕疵があるとしても、当該瑕疵は実質的に軽微なものであるから、免職処分の議決を取り消すべき事由には当たらない。
解答
正解
2解説
1 〇
行政手続は刑事手続とその性質においておのずから差異があることから、常に必ず行政処分の相手方等に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるなどの一定の手続を設けることを必要とするものではない。
・ 成田新法事件 (最判平成4年7月1日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最判平成4年7月1日)
2 ×
公害健康被害補償法に基づく水俣病患者認定申請を受けた処分庁は、早期の処分を期待していた申請者が手続の遅延による不安感や焦燥感によって内心の静穏な感情を害されるとしても、このような結果を回避すべき条理上の作為義務を負う
・ 水俣病認定業務に関する熊本県知事の不作為違法に対する損害賠償 (最判平成3年4月26日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最判平成3年4月26日)
3 〇
一般旅客自動車運送事業の免許拒否処分につき、公聴会審理において申請者に主張立証の機会が十分に与えられなかったとしても、運輸審議会(当時)の認定判断を左右するに足る資料等が追加提出される可能性がなかった場合には、当該拒否処分の取消事由とはならない。
・ 群馬中央バス事件 (最判昭和50年5月29日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和50年5月29日)
4 〇
国税犯則取締法上、収税官吏が犯則嫌疑者に対し質問する際に拒否権の告知は義務付けられていないが、供述拒否権を保障する憲法の規定はその告知を義務付けるものではないから、国税犯則取締法上の質問手続は憲法に違反しない。
・ 国税犯則取締法上の犯則嫌疑者に対する供述拒否権の告知と憲法三八条一項 (最判昭和59年3月27日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和59年3月27日)
5 〇
教育委員会の秘密会で為された免職処分議決について、免職処分の審議を秘密会で行う旨の議決に公開原則違反の瑕疵があるとしても、当該瑕疵は実質的に軽微なものであるから、免職処分の議決を取り消すべき事由には当たらない。
・ 教育委員会沫のもとにおいて教育委員会の会議の公開違反の瑕疵がその議決の取消事由にあたらないとされた事例 (最判昭和49年12月10日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和49年12月10日)
■ 判例
・ 成田新法事件 (最判平成4年7月1日)
「新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(昭和五九年法律第八七号による改正前のもの)三条一項一、二号と憲法三一条」
「新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(昭和五九年法律第八七号による改正前のもの)三条一項一、二号は、憲法三一条の法意に反しない」
「憲法三一条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。 しかしながら、同条による保障が及ぶと解すべき場合であっても、一般に、行政 手続は、刑事手続とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応 じて多種多様であるから、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与 えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、 行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定 されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするもの ではないと解するのが相当である」
(裁判所 裁判例結果詳細 最判平成4年7月1日)
・ 水俣病認定業務に関する熊本県知事の不作為違法に対する損害賠償 (最判平成3年4月26日)
「右認定申請を受けた処分庁が不当に長期間にわたらないうちに応答処分をすべき条理上の作為義務に違反したといえるための要件」
「右認定申請を受けた処分庁には、不当に長期間にわたちないうちに応答処分をすべき条理上の作為義務があり、右の作為義務に違反したというためには、客観的に処分庁がその処分のために手続上必要と考えられる期間内に処分ができなかったことだけでは足りず、その期間に比して更に長期間にわたり遅延が続き、かつ、その間、処分庁として通常期待される努力によって遅延を解消できたのに、これを回避するための努力を尽くさなかったことが必要である」
(裁判所 裁判例結果詳細 最判平成3年4月26日)
・ 群馬中央バス事件 (最判昭和50年5月29日)
「一般乗合旅客自動車運送事業の免許申請却下処分取消請求」
「一般乗合旅客自動車運送事業の免許に関し諮問を受けた運輸審議会の公聴会における審理手続の瑕疵が右諮問を経てされた運輸大臣の免許の拒否処分の取消事由にならないとされた事例」
「一般乗合旅客自動車運送事業の免許に関し諮問を受けた運輸審議会の公聴会における審理手続に申請計画の問題点につき申請者に主張・立証の機会を十分に与えなかつたという瑕疵がある場合においても、仮に運輸審議会がこのような機会を与えたとしても申請者において運輸審議会の認定判断を左右するに足りる資料及び意見を提出しうる可能性があつたとは認め難い判示のような事情があるときは、右瑕疵は、右諮問を経てされた運輸大臣の免許の拒否処分を違法として取り消す事由とはならない」
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和50年5月29日)
・ 国税犯則取締法上の犯則嫌疑者に対する供述拒否権の告知と憲法三八条一項 (最判昭和59年3月27日)
「国税犯則取締法上の質問調査の手続につき、同法に供述拒否権告知の規定がなく、また、犯則嫌疑者に対しあらかじめ右の告知がされなかつたからといつて、その質問調査の手続が憲法三八条一項に違反するものとはいえない」
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和59年3月27日)
・ 教育委員会沫のもとにおいて教育委員会の会議の公開違反の瑕疵がその議決の取消事由にあたらないとされた事例 (最判昭和49年12月10日)
「懲戒免職処分取消請求」
「教育委員会法のもとにおいて、教育委員会が秘密会で免職処分の議決をした場合に、右秘密会で審議する旨の議決に公開違反の瑕疵があつたとしても、同委員会においては、従来から人事案件はすべて秘密会で審議しており、各委員がこれを了知したうえ全員一致で秘密会で審議する旨を議決したものであつて、その議決を公開の会議で行うことが議決の公正確保のために実質的にさして重要な意義を有せず、また、その議決は、一部関係者だけが傍聴できない状況のもとで行われた点において公開違反があるにとどまり、全く秘密裡にされたものであるとはいえないなど判示のような事情があるときは、右公開違反の瑕疵は、実質的に公開制度の趣旨目的に反するというに値しないほど軽微なものとして、免職処分の議決を取り消すべき事由にはあたらないものと解するのが相当である」
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和49年12月10日)