国家賠償制度に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものはどれか。
1
国家賠償法4条に定める「民法の規定」には失火責任法*も含まれるが、消防署職員の消火活動上の失火による国家賠償責任については、消防署職員が消火活動の専門家であることから、失火責任法の適用はない。
(注)* 失火ノ責任ニ関スル法律
2
国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」には、公立学校における教師の教育活動が含まれるが、課外クラブ活動中に教師が生徒に対して行う監視・指導は「公権力の行使」には当たらない。
3
税務署長のした所得税の更正処分が、税務署長が所得金額を過大に認定したとして判決によって取り消された場合、当該更正処分は直ちに国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受ける。
4
警察官のパトカーによる追跡を受けて車両で逃走する者が事故を起こして第三者に損害を与えた場合、損害の直接の原因が逃走車両の運転手にあるとしても、当該追跡行為は国家賠償法1条1項の適用上違法となり得る。
5
同一行政主体に属する数人の公務員による一連の職務上の行為の過程で他人に損害が生じた場合、被害者が国家賠償を請求するためには、損害の直接の原因となった公務員の違法行為を特定する必要がある。
解答
正解
4解説
1 ×
国家賠償法4条に定める「民法の規定」には失火責任法*も含まれるが、消防署職員の消火活動上の失火による国家賠償責任については、消防署職員が消火活動の専門家であることから、
・ 公権力の行使にあたる公務員の失火と失火の責任に関する法律の適用 (最判昭和53年7月17日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和53年7月17日)
2 ×
国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」には、公立学校における教師の教育活動が含まれるが、課外クラブ活動中に教師が生徒に対して行う監視・指導は「公権力の行使」
・ 生徒が課外のクラブ活動中に左眼を失明した事故につきクラブ活動に立ち会つていなかつた顧問の教諭に過失がないとされた事例 (最判昭和58年2月18日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和58年2月18日)
3 ×
税務署長のした所得税の更正処分が、税務署長が所得金額を過大に認定したとして判決によって取り消された場合、当該更正処分は
・ 収入金額を確定申告の額より増額しながら必要経費の額を確定申告の額のままとしたため所得金額を過大に認定した所得税の更正が国家賠償法上違法でないとされた事例 (最判平成5年3月11日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最判平成5年3月11日)
4 〇
警察官のパトカーによる追跡を受けて車両で逃走する者が事故を起こして第三者に損害を与えた場合、損害の直接の原因が逃走車両の運転手にあるとしても、当該追跡行為は国家賠償法1条1項の適用上違法となり得る。
・ 警察官のパトカーによる追跡を受けて車両で逃走する者が惹起した事故により第三者が損害を被つた場合において右追跡行為が国家賠償法一条一項の適用上違法であるというための要件 (最判昭和61年2月27日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和61年2月27日)
5 ×
同一行政主体に属する数人の公務員による一連の職務上の行為の過程で他人に損害が生じた場合、被害者が国家賠償を請求するためには、損害の直接の原因となった公務員の違法行為を特定する
・ 公務員による一連の職務上の行為の過程において他人に被害を生ぜしめたが具体的な加害行為を特定することができない場合と国又は公共団体の損害賠償責任 (最判昭和57年4月1日)
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和57年4月1日)
■ 判例
・ 公権力の行使にあたる公務員の失火と失火の責任に関する法律の適用 (最判昭和53年7月17日)
「公権力の行使にあたる公務員の失火による国又は公共団体の損害賠償責任については、失火の責任に関する法律が適用される」
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和53年7月17日)
・ 生徒が課外のクラブ活動中に左眼を失明した事故につきクラブ活動に立ち会つていなかつた顧問の教諭に過失がないとされた事例 (最判昭和58年2月18日)
「町立中学校の生徒が、放課後、体育館において、課外のクラブ活動中の運動部員の練習の妨げとなる行為をしたとして同部員から顔面を殴打されたなど判示のような事情のもとで生じた喧嘩により左眼を失明した場合に、同部顧問の教諭が右クラブ活動に立ち会つていなかつたとしても、右事故の発生する危険性を具体的に予見することが可能であるような特段の事情のない限り、右失明につき同教諭に過失があるとはいえない」
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和58年2月18日)
・ 収入金額を確定申告の額より増額しながら必要経費の額を確定申告の額のままとしたため所得金額を過大に認定した所得税の更正が国家賠償法上違法でないとされた事例 (最判平成5年3月11日)
「税務署長が収入金額を確定申告の額より増額しながら必要経費の額を確定申告の額のままとして所得税の更正をしたため、所得金額を過大に認定する結果となったとしても、確定申告の必要経費の額を上回る金額を具体的に把握し得る客観的資料等がなく、また、納税義務者において税務署長の行う調査に協力せず、資料等によって確定申告の必要経費が過少であることを明らかにしないために、右の結果が生じたなど判示の事実関係の下においては、右更正につき国家賠償法一条一項にいう違法があったということはできない」
(裁判所 裁判例結果詳細 最判平成5年3月11日)
・ 警察官のパトカーによる追跡を受けて車両で逃走する者が惹起した事故により第三者が損害を被つた場合において右追跡行為が国家賠償法一条一項の適用上違法であるというための要件 (最判昭和61年2月27日)
「警察官のパトカーによる追跡を受けて車両で逃走する者が惹起した事故により第三者が損害を被つた場合において、右追跡行為が国家賠償法一条一項の適用上違法であるというためには、追跡が現行犯逮捕、職務質問等の職務の目的を遂行するうえで不必要であるか、又は逃走車両の走行の態様及び道路交通状況等から予測される被害発生の具体的危険性の有無・内容に照らして追跡の開始、継続若しくは方法が不相当であることを要する」
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和61年2月27日)
・ 公務員による一連の職務上の行為の過程において他人に被害を生ぜしめたが具体的な加害行為を特定することができない場合と国又は公共団体の損害賠償責任 (最判昭和57年4月1日)
「国又は公共団体に属する一人又は数人の公務員による一連の職務上の行為の過程において他人に被害を生ぜしめた場合において、それが具体的にどの公務員のどのような違法行為によるものであるかを特定することができなくても、右の一連の行為のうちのいずれかに故意又は過失による違法行為があつたのでなければ右の被害が生ずることはなかつたであろうと認められ、かつ、それがどの行為であるにせよ、これによる被害につき専ら国又は当該公共団体が国家賠償法上又は民法上賠償責任を負うべき関係が存在するときは、国又は当該公共団体は、加害行為の不特定の故をもつて右損害賠償責任を免れることはできない」
(裁判所 裁判例結果詳細 最判昭和57年4月1日)