狭義の訴えの利益に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。
1
都市計画法に基づく開発許可の取消しを求める利益は、開発行為に関する工事の完了によっても失われない。
2
市立保育所の廃止条例の制定行為の取消しを求める利益は、原告らに係る保育の実施期間がすべて満了したとしても失われない。
3
公文書の非公開決定の取消しを求める利益は、当該公文書が裁判所に書証として提出された場合でも失われない。
4
土地収用法による明渡裁決の取消しを求める利益は、明渡しに関わる代執行の完了によっても失われない。
5
衆議院議員選挙を無効とすることを求める利益は、その後に衆議院が解散され、当該選挙の効力が将来に向かって失われたときでも失われない。
解答
正解
3解説
1 ×
都市計画法に基づく開発許可の取消しを求める利益は、開発行為に関する工事の完了によって
2 ×
市立保育所の廃止条例の制定行為の取消しを求める利益は、原告らに係る保育の実施期間がすべて満了したとしても
3 〇
公文書の非公開決定の取消しを求める利益は、当該公文書が裁判所に書証として提出された場合でも失われない。
4 ×
土地収用法による明渡裁決の取消しを求める利益は、明渡しに関わる代執行の完了によって
5 ×
衆議院議員選挙を無効とすることを求める利益は、その後に衆議院が解散され、当該選挙の効力が将来に向かって失われたとき
・ 開発許可と訴えの利益 (最判平成5年9月10日)
判例「工事が完了し検査済証が交付された後における開発許可の取消しを求める訴えの利益」
「都市計画法29条による許可を受けた開発行為に関する工事が完了し、当該工事の検査済証の交付がされた後においては、右許可の取消しを求める訴えの利益は失われる。」
「開発行為に関する工事が完了し、検査済証の交付もされた後においては、開発許可が有する前記のようなその本来の効果は既に消滅しており、他にその取消しを求める法律上の利益を基礎付ける理由も存しないことになるから、開発許可の取消しを求める訴えは、その利益を欠くに至るものといわざるを得ない。」
( 最判平成5年9月10日)
・ 保育所廃止条例と訴えの利益 (最判平21成11年26月日)
判例「市の設置する特定の保育所を廃止する条例の制定行為が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとされた事例」
「市の設置する特定の保育所を廃止する条例の制定行為は,当該保育所の利用関係が保護者の選択に基づき保育所及び保育の実施期間を定めて設定されるものであり,現に保育を受けている児童及びその保護者は当該保育所において保育の実施期間が満了するまでの間保育を受けることを期待し得る法的地位を有すること,同条例が,他に行政庁の処分を待つことなくその施行により当該保育所廃止の効果を発生させ,入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して,直接,上記法的地位を奪う結果を生じさせるものであることなど判示の事情の下では,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる」
「条例の制定は,普通地方公共団体の議会が行う立法作用に属するから,一般的には,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものでないことはいうまでもないが,本件改正条例は,本件各保育所の廃止のみを内容とするものであって,他に行政庁の処分を待つことなく,その施行により各保育所廃止の効果を発生させ,当該保育所に現に入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して,直接,当該保育所において保育を受けることを期待し得る上記の法的地位を奪う結果を生じさせるものであるから,その制定行為は,行政庁の処分と実質的に同視し得るものということができる」
( 最判平21成11年26月日)
・ 公文書非公開決定と訴えの利益 (最判平成14年2月28日)
判例「愛知県公文書公開条例(昭和61年愛知県条例第2号)に基づき公開請求された公文書の非公開決定の取消訴訟において当該公文書が書証として提出された場合における訴えの利益の消長」
「愛知県公文書公開条例(昭和61年愛知県条例第2号)に基づき公開請求された公文書の非公開決定の取消訴訟において,当該公文書が書証として提出された場合であっても,上記決定の取消しを求める訴えの利益は消滅しない」
「公開請求権者は,本件条例に基づき公文書の公開を請求して,所定の手続により請求に係る公文書を閲覧し,又は写しの交付を受けることを求める法律上の利益を有するというべきであるから」
( 最判平成14年2月28日)
・ 代執行による引渡し完了後の訴えの利益(名古屋地判平成5年2月25日)
判例「土地収用裁決後に代執行により土地の引渡しが完了した場合と同裁決のうち明渡裁決の取消しを求める訴えの利益」
「明渡裁決は,裁決時における土地等の占有者に対し,裁決で定められた明渡しの期限までに土地等の引渡し又は物件の移転をするという作為義務を課すものにすぎず,明渡後における起業者による土地等の占有,使用を受忍する義務をも課しているものではなく,いったん土地等の明渡しが完了すれば明渡裁決の効果としての土地等の占有者の作為義務はもはや存続していないから,明渡裁決の対象となった土地等について代執行による引渡し等が完了した後は,同裁決の取消しを求める訴えの利益は失われる」
( 名古屋地判平成5年2月25日)
・ 衆議院解散後の訴えの利益 (最判平成17年9月27日)
判例「衆議院の解散と選挙無効訴訟の訴えの利益」
「衆議院議員選挙を無効とする判決を求める訴訟は,衆議院の解散によって,その訴えの利益を失う」
「解散によって本件選挙の効力は将来に向かって失われたものと解すべきであるから,本件訴えについては,訴えの利益が失われたというべきである」
( 最判平成17年9月27日)