土. 6月 6th, 2026

次の文章は、学校行事において教職員に国歌の起立斉唱等を義務付けることの是非が争われた最高裁判所判決の一節(一部を省略)である。空欄〔 ア 〕~〔 エ 〕に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。

 本件〔 ア 〕は、・・・学習指導要領を踏まえ、上級行政機関である都教委* が関係下級行政機関である都立学校の各校長を名宛人としてその職務権限の行使を指揮するために発出したものであって、個々の教職員を名宛人とするものではなく、本件〔 イ 〕の発出を待たずに当該〔 ア 〕自体によって個々の教職員に具体的な義務を課すものではない。また、本件〔 ア 〕には、・・・各校長に対し、本件〔 イ 〕の発出の必要性を基礎づける事項を示すとともに、教職員がこれに従わない場合は、服務上の責任を問われることの周知を命ずる旨の文言があり、これらは国家斉唱の際の起立斉唱又はピアノ伴奏の実施が必要に応じて〔 イ 〕により確保されるべきことを前提とする趣旨と解されるものの、本件〔 イ 〕の発出を命ずる旨及びその範囲等を示す文言は含まれておらず、具体的にどの範囲の教職員に対し本件〔 イ 〕を発するか等については個々の式典及び教職員ごとの個別的な事情に応じて各校長の〔 ウ 〕に委ねられているものと解される。そして、本件〔 ア 〕では、上記のとおり、本件〔 イ 〕の違反について教職員の責任を問う方法も、〔 エ 〕に限定されておらず、訓告や注意等も含み得る表現が採られており、具体的にどのような問責の方法を採るかは個々の教職員ごとの個別的な事情に応じて都教委の〔 ウ 〕によることが前提とされているものと解される。原審の指摘する都教委の校長連絡会等を通じての各校長への指導の内容等を勘案しても、本件〔 ア 〕それ自体の文言や性質等に則したこれらの〔 ウ 〕の存在が否定されるものとは解されない。したがって、本件〔 ア 〕をもって、本件〔 イ 〕と不可分一体のものとしてこれと同視することはできず、本件〔 イ 〕を受ける教職員に条件付きで〔 エ 〕を受けるという法的効果を生じさせるものとみることもできない。(最一小判平成24年2月9日裁判所時報1549号4頁)

(注)* 東京都教育委員会

1 分限処分   2 処分基準   3 行政罰   4 同意   5 行政指導   6 指示   7 法規命令   8 職務命令   9 指導指針   10 下命   11 懲戒処分   12 監督処分   13 政治的判断   14 執行命令   15 告示   16 審査基準   17 裁量   18 勧告   19 通達   20 行政規則  

〔 ア 〕
                                     

〔 イ 〕
                                     

〔 ウ 〕
                                     

〔 エ 〕
                                     

正解 ア 19  イ 8  ウ 17  エ 11
解説 〔 ア 〕19 通達
〔 イ 〕 8 職務命令
〔 ウ 〕17 裁量
〔 エ 〕11 懲戒処分

 本件〔 通達 〕は、・・・学習指導要領を踏まえ、上級行政機関である都教委* が関係下級行政機関である都立学校の各校長を名宛人としてその職務権限の行使を指揮するために発出したものであって、個々の教職員を名宛人とするものではなく、本件〔 職務命令 〕の発出を待たずに当該〔 通達 〕自体によって個々の教職員に具体的な義務を課すものではない。また、本件〔 通達 〕には、・・・各校長に対し、本件〔 職務命令 〕の発出の必要性を基礎づける事項を示すとともに、教職員がこれに従わない場合は、服務上の責任を問われることの周知を命ずる旨の文言があり、これらは国家斉唱の際の起立斉唱又はピアノ伴奏の実施が必要に応じて〔 職務命令 〕により確保されるべきことを前提とする趣旨と解されるものの、本件〔 職務命令 〕の発出を命ずる旨及びその範囲等を示す文言は含まれておらず、具体的にどの範囲の教職員に対し本件〔 職務命令 〕を発するか等については個々の式典及び教職員ごとの個別的な事情に応じて各校長の〔 裁量 〕に委ねられているものと解される。そして、本件〔 通達 〕では、上記のとおり、本件〔 職務命令 〕の違反について教職員の責任を問う方法も、〔 懲戒処分 〕に限定されておらず、訓告や注意等も含み得る表現が採られており、具体的にどのような問責の方法を採るかは個々の教職員ごとの個別的な事情に応じて都教委の〔 裁量 〕によることが前提とされているものと解される。原審の指摘する都教委の校長連絡会等を通じての各校長への指導の内容等を勘案しても、本件〔 通達 〕それ自体の文言や性質等に則したこれらの〔 裁量 〕の存在が否定されるものとは解されない。したがって、本件〔 通達 〕をもって、本件〔 職務命令 〕と不可分一体のものとしてこれと同視することはできず、本件〔 職務命令 〕を受ける教職員に条件付きで〔 懲戒処分 〕を受けるという法的効果を生じさせるものとみることもできない。(最一小判平成24年2月9日裁判所時報1549号4頁)


■ 判例

国歌斉唱義務不存在確認等請求事件 (最判平成24年2月9日)

「1 処分の差止めの訴えについて行政事件訴訟法37条の4第1項所定の「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められる場合
2 公立高等学校等の教職員が卒業式等の式典における国歌斉唱時の起立斉唱等に係る職務命令の違反を理由とする懲戒処分の差止めを求める訴えについて行政事件訴訟法37条の4第1項所定の「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められた事例
3 公立高等学校等の教職員が卒業式等の式典における国歌斉唱時の起立斉唱等に係る職務命令に基づく義務の不存在の確認を求める訴えについていわゆる無名抗告訴訟としては不適法であるとされた事例
4 公立高等学校等の教職員が卒業式等の式典における国歌斉唱時の起立斉唱等に係る職務命令に基づく義務の不存在の確認を求める訴えについて公法上の法律関係に関する確認の訴えとして確認の利益があるとされた事例」

「 1 処分の差止めの訴えについて行政事件訴訟法37条の4第1項所定の「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められるためには,処分がされることにより生ずるおそれのある損害が,処分がされた後に取消訴訟又は無効確認訴訟を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものではなく,処分がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであることを要する。
2 公立高等学校等の教職員が卒業式等の式典における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱すること又はピアノ伴奏をすることを命ずる旨の校長の職務命令の違反を理由とする懲戒処分の差止めを求める訴えについて,次の(1),(2)など判示の事情の下では,行政事件訴訟法37条の4第1項所定の「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められる。
 (1) 当該地方公共団体では,教育委員会が各校長に対し上記職務命令の発出の必要性を基礎付ける事項等を示達した通達を踏まえ,多数の公立高等学校等の教職員が,毎年度2回以上の各式典に際し,上記職務命令を受けている。
 (2) 上記職務命令に従わない教職員については,過去の懲戒処分の対象と同様の非違行為を再び行った場合には処分を加重するという方針の下に,おおむね,その違反が1回目は戒告,2,3回目は減給,4回目以降は停職という処分量定に従い,懲戒処分が反復継続的かつ累積加重的にされる危険がある。
3 公立高等学校等の教職員が卒業式等の式典における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱すること又はピアノ伴奏をすることを命ずる旨の校長の職務命令に基づく義務の不存在の確認を求める訴えは,上記職務命令の違反を理由としてされる蓋然性のある懲戒処分の差止めの訴えを法定の類型の抗告訴訟として適法に提起することができ,その本案において当該義務の存否が判断の対象となるという事情の下では,上記懲戒処分の予防を目的とするいわゆる無名抗告訴訟としては,他に適当な争訟方法があるものとして,不適法である。
4 公立高等学校等の教職員が卒業式等の式典における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱すること又はピアノ伴奏をすることを命ずる旨の校長の職務命令に基づく義務の不存在の確認を求める訴えは,次の(1),(2)など判示の事情の下では,上記職務命令の違反を理由とする行政処分以外の処遇上の不利益の予防を目的とする公法上の法律関係に関する確認の訴えとして,確認の利益がある。
 (1) 当該地方公共団体では,教育委員会が各校長に対し上記職務命令の発出の必要性を基礎付ける事項等を示達した通達を踏まえ,多数の公立高等学校等の教職員が,毎年度2回以上の各式典に際し,上記職務命令を受けている。
 (2) 上記職務命令に従わない教職員については,その違反及びその累積が懲戒処分の処分事由及び加重事由との評価を受けることに伴い,勤務成績の評価を通じた昇給等に係る不利益という行政処分以外の処遇上の不利益が反復継続的かつ累積加重的に発生し拡大する危険がある」

(裁判所 裁判例結果詳細 最判平成24年2月9日)

投稿者 Ren Yababa

邪抜刃 廉(やばば れん)a.k.a.フクイレン